夫婦で免許センターに行ったときのこと。
免許証の住所変更のためである。
総合窓口で話をして、記入台に促される。
その後、一番前の席でお待ちくださいと案内をされた。
なかなかゆっくり話す時間もないこの頃だからか、思いがけず話が弾む。
すると、気のせいかもしれないが、窓口の中からいくつも視線を感じた。
前回、免許更新のために一人で訪れたが、独特の緊張感がある。
でも今回は、1人で来る時と心持ちが違うし、今回は写真も撮らない。
そのため、ラフな格好の2人組が、ふらっと立ち寄って、まるでドリンクの注文が出来上がるのを待っているかのよう。
ちょっと浮いていたかも。
14時、窓口のほとんどがガラガラと目の前で閉まった。
「あれ?ギリギリにきてしまった?」
「いや、総合窓口は17:00までだから」
「そうか。じゃあ、さっきちらちらと視線を感じたのはそういうわけだったのかな。窓口をしめるときに、もう全ての人の対応を終えたよね?みたいな確認。
前の席に座ってる二人組は?
ああ、あれは住所変更だから。
なるほど。んじゃ、窓口しめますね。
…みたいな」
気を抜いてヘラヘラ話してたら、綺麗なショートカットのお姉さんに呼ばれた。
完全に気を抜いていたかもしれん、気まずいと思いつつ窓口に立った際に聞かれた。
「失礼ですが、お二人のご関係は、ご夫婦ということで合っていらっしゃいますか?」
「へ?」
チラッと顔を見合わせたあと、「はい」と夫。
なんでそんなことを聞かれるんだろうと頭の中がハテナでいっぱいになった次の瞬間、
「本籍が違うので…」ということだった。
「…あ!そういうことなんですね!なんで、夫婦ですか?なんて聞くのかなと思いました」
わたしがそう言って笑うと、お姉さんも笑っていた。
どうやら夫は免許をとった10代の頃から本籍を変えていなかったらしい。
そもそも本籍地の変更を役所でしたとして、役所と警察署のデータが紐づいてはいないなめ、こちらから手続きしないといけないのだ。
しかしながら身分証としての免許証は、差し当たって必要なのは顔写真と住所だから、これまで気が付かなかったのだろうな…。
ちなみにわたしが免許をとったのは数年前なので、変更の必要はない。
あれ、もしかして。
夫婦で行かなければ、この先何年もそのままだったのでは?
そうに違いない。
さらにいうと、窓口からチラチラとこちらを見る視線はもしかして、本籍地の違う、しかしながら夫婦らしき2人組に対する視線だったのではないか。
「あれ、この2人本籍地が違う」
「え、夫婦で本籍地ちがうとかあるの?」
「ないでしょ~」
「じゃあ、もしかして夫婦じゃない、とか」
「…同じ苗字なのに?」
「兄弟…とか」
(チラッ)
(チラッ)
「ないでしょ~」
「似てないね、顔の系統ちがいすぎる」
「じゃあ、友人…?」
「…同じ苗字なのに?」
(チラッ)
(チラッ)
「いや夫婦でしょ、どっちか間違ってんのよ」
「ですよね、聞いてきます」
こーんな会話がなされていたのかもしれないな。
「失礼ですがお二人の関係はご夫婦で合っていますか」
雨のなか外出するなんて、面倒だな~と思っていたけど。
最近きかれたなかで一番おもしろい質問だった。